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「アイリッシュ・ヴァンパイア」あらすじと感想ネタバレなし

作品情報

作者ボブ・カラン
訳者下楠晶哉(しもくすまさや)
レビュー 5.0
発行日2003/11/30
総ページ数266
ふるかわ

アイルランドの辺鄙な田舎で秘匿される血塗られた歴史。
近づけば、そこには死してなお生者を脅かす冷酷な捕食者の気配が…。
ロマンチックな舞台で展開する吸血鬼ホラー。

(本ページはプロモーションが含まれています)

【アイリッシュ・ヴァンパイア】作者紹介

ボブ・カラン(愛 Bob Curran)
教育心理学博士で歴史と英文学の学位も持つ。BBCの番組などでキャスターを務めるほか
さまざまな分野の文化団体での活動、アイルランド全体への歴史的興味を喚起する旅行企画など、マルチに活躍している。

【アイリッシュ・ヴァンパイア】あらすじ・登場人物(ネタバレなし)

アイリッシュ・ヴァンパイアには4作品が収録されている。

収録作は総じて、作者が収集したアイルランドの暗い民話の要素を含んでおり、舞台は辺鄙な田舎
ストーリーはシンプルで難しくはないが、登場人物や地名など固有名詞が多くややこしい。
難読文字含め、まとめて記載するので、読書の際の一助にしていただければ嬉しい。
ストーリーに関わる氏名などは太字で、重要ではない氏名などはデフォルトサイズのまま、もしくは未記載とした。

1.炉辺にて

あらすじ
一人旅をする歴史学者の男は、周辺住民が寄り付かない曰くつきの土地「カッスルクィン」を訪れる。
廃墟と化した土地にある一つの小屋に侵入した男は小屋の石壁を触り怪我をする。
以降、カッスルクィンで過去に起こった凄惨な場面を夢で見るようになり、傷ついた手の疼きも止まらず
恐怖と困惑の度を深めていく。男は謎の多いカッスルクィンの歴史と黒い噂を集め、自身に降りかかった災いに対峙する。

登場人物・地名など

レドモンド…イングランドの大学で教鞭をとっていた歴史学者。
       長年のストレスにより神経が衰弱。療養も兼ねた一人旅でアイルランドのゴールウェイにやってきた。

オドイヤー夫人…レドモンドが今回の旅の定宿にしているゴールウェイにある宿の主人。
パディ・オドイヤー…オドイヤー夫人の夫。宿の1Fのパブを経営。

カッスルクィン…小さな城とその遺跡に位置する小村の呼称。
          城は1184年に建てられた。現在は崩され見る影もない。

[かつて城に住んでいた者たち]
アダム・レノックス…まだ新しいころの城に住んでいた聖職者。黒魔術師ではないかと噂されていた。
タハグ・ダル・オホィン…1500年代、廃墟のようになった城を砦にしていた残虐な男。
フェア・ガン・アム…(フェア・ガン・アムとは私生児の意。)タハグの腹違いの弟。
         1538年にタハグを何度も刺して殺害。その2年後、自身はフィッツジェラルド伯爵に殺害される。

[現在のカッスルクィンの所有者:フヌークン一族]
トマス爺さん…トーマス・フヌークン。マイクルの父。
パット・フヌークン…老人。
マイクル・フヌークン…6人の子持ち。
マイクル・オグ…マイクル・フヌークンの長男。
          廃墟となったカッスルクィンを徘徊する。レドモンドを大声で威嚇した。
アニー・サリヴァン…カッスルクィンに続く道にある小屋に住む老婆。
          マイクルの姉だがマイクルに家賃をとられている。夫の名はシェイマス(故人)。

フォウリー…謎の人物。

2.森を行く道

[あらすじ]
上手くいかない暮らしに疲れた女は望郷の念に駆られ、
子供時代を過ごしたロングフォード州の懐かしい叔母の家に身を寄せる。
温かく迎えてくれた叔母も家も、家の裏に広がる不気味で人を寄せ付けない「ダンゴートの森」も昔のままだ。

女は、家の引き出しに入っていた新聞記事から1950年代、森に入った10代の3人の少女が失踪し、
未だ行方不明であることを知る。そして、失踪した少女のひとりの叔父である老人から
「森は、傷ついて、怯え、淋しい誰かを待っている」と、森に近づかないよう警告されるが、
何かに誘われるかのように森に足を踏み入れ、不思議な雰囲気の男に声をかけられる。

登場人物・難読文字など

シネード・ファレル(26)…結婚のため、親の反対を押し切って大学を中退し勘当される。
               2年後に離婚。叔母以外に頼れる人がいない。
ベン…シネードと結婚したイングランド人の男。
ダーモット…シネードの弟。「アン」と婚約中。
バーバラ・ホラン…叔母。シネードの母の姉。
ジョー・ホラン…バーバラの夫。13年の闘病の末、心臓発作により死去。
マッカーシー…神父。
メアリー・オコナ―(8)…消息不明により捜索中の少女。
            (シネード滞在2日目の朝、ラジオから先週火曜日に消息を絶ったと放送される。
             1950年代の少女3人失踪事件とは別件。)
ショーン・クロスリー…捜査官。捜索を指揮。
ロナン・ケイシ―…記者。
マイクル・コリガン…ハドスン地所についての本を上梓。90歳を超える老人。
            1950年代に姪が森で失踪している。
キャスリーン…マイクル・コリガンの娘。夫に先立たれ今はマイクルと二人暮らし。

[1950年代に失踪した3人の少女]
叔母によると…キティー・ライアン、マイクル・コリガンの姪、残るひとりは不明。
マイクル・コリガンによると…キティー・ライアン、ブリジット・バーク(※)、メアリー・フラッド
最初「ブリジット」と言われてますが後は「ブリディー」表記になっている。意図は不明。

メアリー・ローガン…シネードの幼少期にいた小柄な女性。すでに死亡。
マーガレット・ローガン…メアリーの娘(らしい)叔父の名はジョン。
フランキー・ケリー…シネードの幼少期にいた子だくさんのお金持ち。
ダニエル・サリヴァン…喧嘩っ早いが優しいモーリーンの祖父。
リアム…森で会った謎の男。
フランシス・フォーリー…神父。信仰にあつく、民衆に慕われた。

ハドスン一族…クロムウェルの時代からの森の地主。悪魔に魂を売り渡したと噂される。
       (クロムウェルとは今日でも嫌われている、1649年~1653年にアイルランドを占領した男。)
マラヴ・ヴォー…”生きている死人”の意。
キツネノテブクロ…”ジキタリス”ともいわれる、鐘が連なったような見た目の花。森に群生している。
翳…読み方「かげ」

3.乾涸びた手

[あらすじ]
「見せたいものがある」と誘われて、友人の不気味な大邸宅を訪れた学者の男。
汚いスープを供され、オカルティズムな文献を読んだ感想を熱心に語られ辟易した末に、満を持して見せられたのは、
かつて悪逆の限りをつくしたとされる魔女の乾涸びた手であった。

登場人物など

ダニエル・カーティス…学者。久々に再会した友人リチャードを警戒するも、彼の蒐集品に興味を持つ。
リチャード・ファラント…興味のあること以外に打ち込めない性分。オカルトマニア。
みすぼらしい案山子のような容姿で明らかに不健康だが、オカルトについて語る時はエネルギッシュで目がギラつく。

キリグリュー夫人…本名”アリス・キリグリュー”。
   1580年代にコーク(という土地)沿岸を縄張りにした海賊の女王。残虐な性格で古の魔術を使ったといわれる。

デズモンド・キリグリュー…キリグリュー一族の中で最初に爵位を与えられた人物。
ジェイムズ・キリグリュー卿…コークの初代総督。デズモンドの息子。
※アリスがデズモンド、ジェイムズどちらの妻であったかは定かではない。
 ストーリーは「アリスがデズモンドの妻」だったと仮定して進められる。
ストロングボウ…強弓を引く男の意。1169年のアイルランド侵攻の中心人物”リチャード・ド・クレア”を指す。

ストーリー内では多くの本のタイトルが記述されている。
“「遥かな山脈への旅」(作:ポール・クリン)、「手相学」(作:ロバート・フラド)、
「悪魔」(作:ドゥ・スタンパ)、「悪魔実記」(作:ヨハン・ルーフリン)、
「魔女の技術に関する諸講話」(作:マンネリング)”などなど
これらは物語の本筋には関わってこない。(よって頑張って覚えておく必要はない。)
おそらくはリチャードの偏った趣味と入れ込み具合を演出するための記載かと思われる。

4.仕えた女

あらすじ
ウィックロー州に訪れた素晴らしい夏。村の子供たちは野原を駆け回り、川で遊んだ。
しかし、呪われた血と噂される名家の老主人が亡くなってから、村の老人、子供が高熱を出し倒れだす。
眩しい日々には悲しみと恐れがたれこめ、暗い影を落とした。

大人たちは名家に仕えていたある女中が子供たちに悪さをしているのではないかと囁き合う。
倒れた者たちの症状は快方に向かわず、被害者も増えていく。
対処法が見つからず手をこまねくばかりの大人たちの焦りは日に日に募り、女中への疑心も高まっていき…。

登場人物難読文字など

メアリー・オヘア…名家「オシー」一族の屋敷「アルドナガップル」に住み込みで働いていた中年の女中。
           小柄で細身。
スカリオン…「アルドナガップル」の女中。オヘアとは友人。ふくよかで豪快。
マーガレット・オシー…アルドナガップル邸の女主人。
           名家「オシー」一族最後の生き残り。100歳を超えており黒く乾涸びた容姿。
マナス・オシー卿…マーガレットの父。

[ケイシ―家]
父「シェーマス」と母(氏名の記載なし)の間に7人の子供がいる。
ティーンエイジャーのブリジットとテレーズ、マーティン(11)、
主人公のフィリップ(9)、ピーター(7)、キャスリーン(6)、赤ちゃんのティム。

ジョニーンおじさん…シェーマスの兄。
クリスティーおじさん…シェーマスの弟。

ジミー・ハリー…噂好き。フィリップの友達。
ダン・コイン…ジミーのおじいちゃん。子供たちに武勇伝や怪談を話して聞かせてくれる。

オリアリー…元産婆。病気や疾病にとても詳しい。

経帷子(きょうかたびら)…死者に着せる衣装のこと。
やもめ…配偶者を失って独身でいる者。

【アイリッシュ・ヴァンパイア】感想(ネタバレなし)

数百年にわたり熟成された贅沢な民話に触れられ大変満足いたしました。
泥臭さや不潔な感じは抑え目で、グロ要素はないです。不気味な廃墟や森から少々の腐敗臭が漂いますが、
過度な残酷表現はないので怖すぎるのが苦手な方でも読みやすいと思います。

著:ボブ・カラン, 翻訳:下楠 昌哉
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