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ガストン・ルルーの「恐怖夜話」あらすじと感想ネタバレなし【刺激強め】

作品情報

作者ガストン・ルルー
訳者飯島宏
レビュー 5.0
発行日1983/10/21
総ページ数253
ふるかわ

万人におすすめしたい1冊!
刺激強めでまさに「恐怖」の物語。

(本ページはプロモーションが含まれています)

【ガストン・ルルーの「恐怖夜話」】作者紹介

ガストン・ルルー(仏 Gaston Leroux 1868-1927)
弁護士資格を有する新聞記者でセンセーショナルな国際事件を追って
ヨーロッパ全域、中東各地を飛び回り危険な経験もしてきた。
30代の終わりに上司と口論の末、退社し職業作家になる。

本書に収められた8編は、ガストン・ルルーの創作活動のもっとも脂ののっていた1920年代に書かれた作品。

代表作…「黄色い部屋の謎」(1907)「オペラ座の怪人」(1911)

ガストン・ルルーの「恐怖夜話」あらすじ|ネタバレなし

ガストン・ルルーの「恐怖夜話」には以下の8編が収録されています。

1.金の斧

観光シーズンを過ぎた秋のグエルソイ(スイスの小さな村)に逗留した時の話だ。
宿屋のテーブルを囲むのはせいぜい5~6人の逗留客で気も合い、
昼間の散策を語り合ったり、ささやかな音楽の夕べを催したりした。

客の一人である老婦人はいつも黒いベールで顔を覆い、悲しみの権化のような人物だったが
実は第一級のピアニストであることが分かった。彼女の感情のこもった見事な演奏ぶりに我々は涙を禁じえなかった。

一同は甘美なひと時をくれた老婦人に秋のグエルソイの思い出として斧をかたどった金のブローチを用意した。
老婦人にブローチの入った小箱を渡すと影のような微笑を浮かべて受け取ってくれた。
しかし、箱を開いて中身を見るが早いか彼女はぶるぶると震え出した。
そして、嗚咽にむせびながら非礼を詫び、金の斧に怯えた原因となった陰惨な身の上話を語り始めるのであった。

2話目~6話目はフランス地中海に面するツーロンのヴィエイユ・ダルスに日が沈むころ
あるカフェテラスに集まる老船乗りたちが、アペリチフ(食前酒の意)のグラスを傾けながら
奇談怪談の類を披露する形式で物語が綴られます。

2.胸像たちの晩餐

20年ほど前、ミッシェル(性別は男)が相続で手に入れた別荘の真向いの別荘で体験した話。

ミシェルは遠洋航海の合間、相続したこの静かな土地での骨休めを楽しみにしていた。
眠りについていたある夜、何かさっぱり見当がつかないが妙な騒がしさで目が覚めた。

雷鳴の轟きか太鼓の連打かと思うような凄まじい響きが真向いの別荘から聞こえる。
異様な物音はなり続け、日が昇るころ別荘のドアが開いて夜会用のドレスを着たすこぶる美しい女が現れた。
「さようなら。また来年!」招待客を送るしぐさを見せる女。しかし、彼女以外に人は見受けられない…。

ミシェルはその別荘の所有者が旧友「ジェラール」であることを知り、
妻であろうあの美女にジェラールに会いたい旨を伝えに行く。
すると、申し訳なさそうに、「ジェラールは誰にも会わない。家には来ないでほしい。」と強く拒絶される。

美しい夫人と奇妙な出来事に魅せられた一夜からちょうど1年が経過した日、
ミシェルは愚かにも夫人の言葉を無視し、ジェラール宅に足を踏み入れるのであった。

3.ビロードの首飾りの女

フランスのコルシカ島、ボニファシオという町で海軍歓迎の宴に参加した「ゴベール大尉」が体験した話。

目の覚めるようなコルシカの女の美しさに見入っていると、
ひときわ、異様な美しさを放つ黒いビロードの首飾りの女が現れた。

町民の話によるとビロードの首飾りの女こと「アンジェルッチア」はギロチンにかけられた過去があり、
首飾りを外すと首が落ちるのだという。この世のものとは思えない妖しい美しさを持つ彼女には
そのような噂が広がるのもうなずける魅力があった。

驚くことにアンジェルッチアを取り巻くものものしい話はゴベール大尉が2度目に町を訪れたときに進展を見せていた。
大尉は人間の強い復讐心と、語られる当時の光景に戦慄を覚えるのであった。

4.ヴァンサン=ヴァンサンぼうやのクリスマス

カフェテラスの老船乗りたちの前に酔っぱらた「ジャン=ジョセフ」が現れる。
ジャンはたまに老船乗りたちに話を披露する仲間で、「ヴァンサン=ヴァンサン」という養子がいるという。
ある日、ジャンは涙ながらにヴァンサンについて話した。

ジャン「可哀そうな子なんだ…父親は殺されたんだ。そして母親は、」
老船乗りたち「どうした!?おふくろは?」
ジャン「同じく殺されたんだ。」
老船乗りたち「なんてこった!下手人はどんなやつだったんだ?」
ジャン「下手人はいなかった。」
老船乗りたち「じゃあ、なにかい?二人で喧嘩でもしたのかい?」
ジャン「何をバカな!言い争いをしているところも見たことがない!二人は押し込み強盗に入られて殺されたんだ。」
老船乗りたち「じゃあ、下手人は強盗じゃないか。」
ジャン「強盗はいなかった!」
老船乗りたち「???」

「強盗はいなかった」とのジャンの証言は真実である。これは、奇妙なクリスマスの惨劇に隠れた切ない愛の物語。

5.ノトランプ

こんな状態のザンザンをカフェテラスの仲間は見たことがなかった。
目が眼窩から飛び出し、顔色が死人のように青ざめていたのだ。

若かりし頃のザンザンの身近で起こった、解決済の殺人事件に進展があったことを警視から聞かされたのだという…。

あれは、「オランプ」という15歳の少女の結婚話に端を発した。
少女は家柄は良いが、金はない。しかし、男たちが「ノトランプ(われらのオランプ)」と崇めるほど美しかった。

ある日、オランプの祖母が求婚者12名(ザンザン含む)を召集しオランプに誰と結婚するか決めるようにいった。
オランプは彼らを吟味し順位をつけ始め、1番の男と結婚した。ザンザンは4番であった。

1番の男との結婚生活は男の事故死により1年ほどで終わりを告げた。
その後、2番の男と再婚するがまたしても夫は不可解な死を遂げる。

不幸な偶然か?オランプによる連続殺人か?
残る求婚者たちにも悲劇が待ち構えていたのだった。

6.恐怖の館

シャンリューが新婚旅行先のスイスで体験した話。

風光明媚なジュラ山脈を登ったところにぽつんと建っている宿屋はこの上なく忌まわしい惨劇の舞台であった。
宿の経営者である男とその醜い夫人は金目当てに宿泊客を次々と襲い、
客の中にいた美しい女は夫人の嫉妬により酷い拷問を受けた。

この事実は経営者夫婦が亡くなった後、夫婦の召使の老女の証言により発覚した。
宿の井戸や近くの洞窟からは十幾つもの骸骨が見つかった。

宿は新しいオーナー「シェーファー氏」によって引き続き経営されている。
物好きの観光客が道中、この「血の宿」に立ち寄り一杯やるのが人気の観光コースになっているのだ。
商魂たくましいシェーファー氏はかつて繰り広げられた残酷な出来事を情感豊かに観光客に聞かせて楽しませている。

シャンリュー夫婦も「血の宿」の見物に向かったところ、急な土砂降りで足止めされ、
もう一組の男女と共に「血の宿」での宿泊を余儀なくされた。
意外にもシェーファー氏は陽気の塊のような人物でシャンリュー夫人の警戒も溶け、束の間、楽しいひと時が過ぎた。

しかし、シェーファー氏の無遠慮な語り口が加速し、
当時の殺人夫婦の再現のために、あえて結婚した醜いシェーファー夫人の登場にその場は凍りつく。
シェーファー氏の常軌を逸した行動に身の危険を感じるシャンリュー。その夜、悪鬼のごとき所業が再演される!

7.火の文字

狩りに出かけ激しい嵐に見舞われた4人の若者は近くの屋敷に避難する。
若者の1人が女中の止めるのもきかず、ある部屋に入ることで主は激怒した。

許しを請い、何とか怒りを鎮めようとする若者。
主は「悪魔に憑りつかれた部屋」と、呪われた自身の生涯について語りだす…。

8.蝋人形館

ある冬の夜、4人の裕福な若者がレストランで食卓を囲んでいた。
雑談のテーマが「恐怖」に移ったとき、2人の意見が対立した。

ピエール「恐怖は自分の内側から生じる。心も体も健康な者は恐怖を知らない。」
エドモン「恐怖の原因は外側にある。どんなに勇気のある者でも恐怖心を抱くことはある。」

どんな気味の悪いところに行っても恐怖を感じないというピエールに、賭けを持ちかけるエドモン。
近くの蝋人形館で一晩過ごし朝出てきたとき、恐怖を感じたか否かを正直に言う、
「恐怖を感じなかった」ときはピエール、「恐怖を感じた」ときはエドモン含む3人の勝利だ。

気味の悪い蝋人形館に入るも気丈に振舞うピエール。
館には名高い犯罪事件や処刑の場面が再現されている。
暗闇に紛れる蝋人形はピエールの想像の中で本物の人間さながらに当時の犯行を再現する。

護身用の小銃を握り、正気を保とうとするピエールだが、想定外の出来事が彼を襲うのであった。

ガストン・ルルーの「恐怖夜話」感想ネタバレなし【刺激強め】

ストーリーの舞台が魅力的で人間心理と狂気の発想、派手な流血シーンにゾックゾクの
エンターテイメント性の高い作品です。

アイディアがギュッと詰まっていて読み応え抜群!

著:ガストン・ルルー, 翻訳:宏, 飯島
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