作品情報
作者 | 道尾秀介 |
レビュー | 5.0 |
発行日 | 2009/01/31 |
総ページ数 | 228 |
ふるかわ
平凡を装うことに限界をきたした登場人物たちは
著者が仕掛けるちょっとしたきっかけで破滅に真っ逆さま。
ずば抜けたセンスと巧みすぎるストーリーに酔いしれる極上ホラー。
(本ページはプロモーションが含まれています)
道尾秀介「鬼の跫音」あらすじ
道尾秀介「鬼の跫音」(おにのあしおと)には
6つの短編が収録されています。
- 鈴虫…大学時代、鈴虫が鳴く季節に犯した罪が露見し、妻子の前で警察に連行された男。
痴情のもつれから友人の死体を埋め、その後も苛まれ続けながら生きる男の物語。 - 犭(ケモノ)…祖母が大切にしていた刑務所作業製品の椅子の足を誤って折った僕。
折れた足の断面には、あるメッセージと猟奇殺人を犯したSのフルネームが刻まれていた。
興味を惹かれた僕は真相を探りに事件現場のある村に向かう。 - よいぎつね…秋の祭りで披露される伝統芸能「よい狐」の取材のため、
記者の男は逃げるようにして去った地に20年ぶりに足を踏み入れた。
若かりし頃、悪ふざけがエスカレートし犯した罪。
気持ちとは裏腹に犯行現場に足を運ぶ男の目の前で当時の景色がフラッシュバックする。 - 箱詰めの文字…駆け出しの小説家の男の元をある青年が訪問してきた。
青年は、小説家の不在時に盗み出した招き猫型の貯金箱を返し謝罪をする。
しかし、その招き猫に心当たりのない小説家。
その中には折りたたまれたメモ用紙が入っていて…。 - 冬の鬼…一月八日、七日、六日、
― ある女が綴る日記が時を遡って表れる。慎ましい生活の背景にある秘密が少しづつ明かされていく。 - 悪意の顔…クラスメートのSの度を越したいたずらに悩まされる小学4年生の僕。
一人で下校中、古い民家の塀から顔を出した女の人に声をかけられる。
「誰にも言わないなら助けてあげる…。」要領を得ないが、女の言葉にすがり僕は彼女の招きに応じる。
【鬼の跫音】感想|ネタバレなし【極上ホラー短編集】
- 鈴虫…人を埋めたという過去を持つ男がすまし顔で妻子と暮らしながらも
常に罪に付きまとわれ疲弊しながら生きるさまが見事に描かれておりピリピリとした空気感が伝わる。
物語に仕掛けられたトリックに「一本取られた!」と膝を打ち驚き、興奮したり、
様々な感情が沸き上がり、良作に出会えた喜びと余韻に浸れた。
登場人物それぞれの立場に立って事件について考えてみたり、一度で何度もおいしく、深い味わいのある話だった。 - 犭(ケモノ)…Sの殺害動機がさっぱり想像がつかないので、主人公と共にノリノリで事件現場へっ!
真相を知って「そ、そんな、信じられないっ。こんな酷い人間がいるの!?」。
嫌悪と同時に、自分では考えられないような人の闇に驚き、魅入られた。 - よいぎつね…お祭りって女子が浴衣姿を披露する場だったり、みんなが何かを期待している感じが漂ってる。
そんな、熱にうかされたような霞がかったような雰囲気。
自分の中に制御しがたい狂気が潜んでいることに怯えている。そんな人間も実際にいるのかもしれないな。 - 箱詰めの文字…それはやってはいけないっ!?をしでかした主人公と青年の化かし合い。
人物が平凡を装ってクセがある。読者はというとこの二人に騙され続け、
洗濯機の中に放り込まれたかのようにグルグルグルグルしちゃう。
何が本当なの!?翻弄されながら、嘘つくの上手いな!と感心もした。 - 冬の鬼…一回読み終わってすぐに時系列順に読んでみる。
ほぅほぅ、ふむふむ、と状況を把握した上で読むのも面白い。
ただ「鬼の跫音」について理解及ばず。 - 悪意の顔…Sくんは人を憎みぬく才能があるのかな?
悪意に費やすエネルギーがずば抜けて強い子。
この物語は終わっても、Sくんは主人公の男の子に関わり続け、
自分の考える最高の形で主人公に恐怖を与えるんだろうなぁ。
本書「鬼の跫音」は本の朗読音声を提供している
AmazonのサービスAudible(オーディブル)に収録されています。
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