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異形コレクション5【 水妖 -すいよう- 】|あらすじと感想ネタバレなし

作品情報

監修井上雅彦
レビュー 4.0
発行日1998/07/15
総ページ数595
ふるかわ

日本人作家「27名」による豪華短編集!
三者三様の水にまつわる怪奇譚を楽しめる。

(本ページはプロモーションが含まれています)

異形コレクション5【 水妖 -すいよう- 】あらすじ|感想|ネタバレなし

面白くて感動した話のタイトルには黄色いマーカーを付けてます。

■淡の章

  1. 水虎論(朝松健)
    1540年(室町時代後期)、摂津(今の大阪北中部)の水無川庄(みずなしがわのしょう)という場所に
    小さな山城「綱門城」があった。城の主は伊那綱門藤原善亮(いなつなかどふじわらのぎりょう)。
    年齢は数えで四十二。野太刀が自慢の暴れ者の大男だが、ある予言を恐れていた。

    その予言とは…
    一、細川政元は飯綱(いいつな)の法を学んだことを帝に漏らし、翌年に養子に殺害される。
    二、政元の死後三十三年目の正月より悪疫が諸国に蔓延する。
    三、同年七月終わりから八月半ばにかけ、政元と共に飯綱の法を学びし稚児が水虎に食い殺される。

    一、二、は予言通り現実となった。そして「三」で食い殺されることを予言されている「稚児」こそ、
    かつての「伊那綱門藤原善亮」なのである。
    綱門は予言をくつがえしたいが「水虎」の正体がわからないでいた。
    行者、修験者など大勢の知恵者を招くも、水虎について未だ決定的な情報を掴めていない。

    「水虎」とは何か?綱門は運命に逆らうことができるのか!?

    [感想]
    年号・月・氏名などなかなか読みが難しいのですが、室町時代にタイムスリップした気分になり、
    重厚な雰囲気にうっとりしました。
    話は主に、「綱門城」の一室に待機している琵琶法師の老人、青年僧、修験者の三人が叩きつける雨音と暗闇の中、
    燭台を灯し、酒で体を温めながら「水虎」の正体について議論しながら進んでいきます。
    綱門は稚児時代について周りに語っていないことがあるんですけど、
    その秘密が明るみになったとたんに恐ろしい事実も露見します。
    室町密教ロマンミステリー…といった感じです。大雨の日に読みたいお話。
  2. 貯水槽(村田基)
    「このマンションに引っ越してすぐ、おれは水道の水の味がおかしいことに気づいた。
    屋上の貯水槽に動物の死骸が浮いているとか、藻が繁殖しているとかに違いない。」

    しばらくはミネラルウォーターでやり過ごしていたが貯水槽の中の様子が気になって頭から離れない男。
    ある日、屋上に登り確かめるとかなり意外なものを目にする。

    [感想]
    神経質で薄情な主人公の行動が、実在する人物であるかのような説得力を持っている。
    男は貯水槽の中身を見下ろし権力者として振舞うが、立場の弱いものに偉そうにする様子は情けなく、
    そんな男を読者は高みから見ている。という状況が面白かった。
    この話にはあらすじでは書けない全く別の楽しみ方もある。かなりギョっとした。
  3. すみだ川(加門七海)
    「母ちゃん、怒ってるだろうな」夕方にお使いに出た修太は預かった金を落とし、隅田川沿いで途方に暮れていた。
    月も登り、外灯が灯るころ「ををう。ををおん。」と鐘のような音が鳴り響いた。
    修太は祖母から聞いた隅田川に沈んだといわれる鐘の伝説を思い出す。
    「ををう。ををおん。」二度目のそれは鐘というより獣の鳴き声のようだ。
    暗闇の向こうに牛鬼の赤い目を見た修太は飛び上がるように細い道を逃げ出すが…。

    [感想]
    現代人がすみだ川にまつわる伝説に遭遇するストーリーです。
    この作品では『鐘ヶ淵の沈鐘伝説』、源頼光が盗賊であり息子でもある牛鬼を討伐した『牛鬼伝説』
    人買いに連れ去られた息子「梅若丸」を母が捜す『梅若伝説』が出てきます。
    この伝説の予備知識の有無で作品の理解度が変わってくると思います。

    私は一度読み終わって、よくわからなかったので、伝説の内容を調べてからまた読んでみました。
    結局(わからなくて)5回くらい読みました。

    すみだ川の伝説をご存じの方は所見から話の仕組みを理解し、作者の趣向を存分に楽しめると思います。
    私のように詳しくない人は伝説について知る機会になり、本作に対する理解を深められる面白さを感じられるはず。

    ちなみにタイトル「すみだ川」の「すみだ」が「隅田」と漢字表記ではないのは
    他に「墨田/須田」とも呼ばれていたためかと想像します。
  4. 水中のモーツァルト(田中文雄)
    映画製作のプロデューサーを務めるその男は、夜も21時を回った川崎市の高級住宅街の外れ、
    雑草の生い茂る溜池で蚊に群がられながらあるものを探していた。
    撮影中の「レディーバンパイア 吸血鬼の息子」のヒロインを務める美郷京子が
    撮影現場の溜池に指輪を忘れてきたというのだ。
    今日は興行担当の役員にわざわざ本社まで呼ばれ嫌味を言われてから長時間の撮影をこなしくたくただ。
    主演女優の機嫌を損ねるわけにはいかず、泣く泣く指輪探しをする男の前に、一人の少年が現れる。
    男は、微笑む少年の左手に月の光を反射し光るものを見つける。

    [感想]
    作者自身が映画のプロデューサーだったとのことで、映画製作現場について細かい描写が多く、
    初めて覗く世界を新鮮な気持ちで楽しめました。空気は昭和っぽいです。
    ストーリー自体は読みにくいということもないのですが、面白いと思えるほどではなかったです。
  5. 濁流(岡本賢一)
    大雨が降った翌朝のことだった。僕は小学2年生の時、同級生のカナを川に突き落として殺してしまった。事故だった。しかしそのことを誰にも告げることはなかった。自分がしたことの重大さに気づき恐ろしくなったのである。
    数日して刑事が僕の家に聞き込みに来たが「知らない。」と答えた。

    初めてその症状が現れたのは今から半年ほど前だった。
    家族で旅行中、ヤクザに車をこすったと因縁をつけられた時のことである。
    仕方なくサイフを取り出そうとしたところ、通りの向こうに自転車に乗った警官を見つけ、助けを求めた。
    警官はこちらに気づき、急いで自転車を漕ぎ近づいてくる。
    そして、自転車は前のめりに転倒し警官の身体は音もなく地面に叩きつけられた。
    飴のように砕けた警官は自転車と同じ速度でこちらにいるヤクザにまとわりつき流れ去った。
    流れた警官に気づいているのは僕だけだった。

    その後も人が流れる現象を目の当たりにし、その対象は身近な人物にも及ぶようになり、
    ただの気のせいと誤魔化すわけにはいかなくなる。

    [感想]
    警官が流れるという唐突な展開と、転倒するときのアクロバティックな動き、
    崩れ方(作中では↑あらすじより詳しく書かれてます)を想像して
    呆気にとられ笑ってしまいました。小学2年から変わらない主人公の発想、心の動きが実に丁寧に描かれており、
    かつ飽きがこない。主人公を追い詰めるストーリー展開も見事で心に残る作品になった。
  6. 水底(安土萌)
    (それ)にとって、緑色の濁った水底はとても居心地が良かった。(それ)は眠りを乱されるのが嫌いだった…。

    孤独な少年「雄二」の秘密のノートには近所の古い用水路で起こった、彼のあずかり知らぬ惨劇が
    雄二の字で詳細に書かれていた。その日も、雄二が眠りから覚めると
    開かれたノートに(それ)の機嫌を損ねたものの末路が書かれていて…。

    [感想]
    細かいことは謎のままだけど、雰囲気と少年の孤独、ノートの仕掛けの妙を楽しむ物語かと。
    短かったし読みやすかった。
  7. 乾き(中原涼)
    娘が、暗くなる前に帰ってくる言いつけを破るようになった。夜も寝付けず、学校の宿題も忘れことが多くなった。
    平静を装っているが、妻が行方不明となった事実が娘の精神バランスを崩しているのだろう…。

    父である男も、会社をクビになったばかりで次の仕事が見つからず心に余裕がなくなっていく。
    ある日、帰宅した娘が「公園の向こうの橋の上でママに会ったよ。」と男に告げる。
    そんなはずはない、だが確かめずにはいられない!深夜、男はゴルフクラブを持ち橋に向かう。

    [感想]
    妻がいなくなって、娘を父ひとりで面倒見るのも大変なのに、就活中って、
    もう焦りとパニックで疲労して何も手につかないですよね。
    残された父娘を心配していたら、、アレ?そういうこと!?恐ろしい真実と驚きのラストを迎えます。
  8. 川惚れの湯(草上仁)
    OLの由子は女友達と三人で興味深い言い伝えのある温泉にやってきた。
    言い伝えとは『水浴びをしていた娘に一目ぼれした「川」が男の姿をして娘の前に現れるも娘に気味悪がられ、
    川は怒って娘の村を水浸しにする。困った村人が川の機嫌を取ろうと娘を川に水浴びしに行かせる。
    そして娘は戻ってくることはなかった。』というものである。

    温泉に入ってから由子は水の味を甘く感じたり、寝ているときに見えないものに愛撫されるなど、
    まるで言い伝えの「川」に付きまとわれている感覚を覚える。
    薄気味悪さに耐え切れず、交際相手の住まいで夜を過ごしたとき、恐怖の現象を目の当たりにする。

    [感想]
    ヒロインが川に見初められ、悲劇に見舞われる話なのですが、
    どうも、ヒロインに助かってほしいという気持ちが芽生えなかった。
    自由自在に動ける水が次に何を仕掛けてくるか、という部分は期待して読めた。
  9. 金魚姫(松尾未来)
    一匹の金魚が少女に変身し、恋する大学生と短く切ない逢瀬を交わす。

    [感想]
    著者の本職は魔女だそうです。内容に関しては感情移入できず。
  10. 月の庭(早見裕司)
    「シン」は小学5年生とは思えないほど大人びていて賢く、「トモキ」たちグループのリーダー的存在だ。しかし、トモキはシンの行き過ぎた行動に恐怖も感じていた。ある夜、トモキ達は神社に集まり、そこにはシンにおびき出された「ヨウコ先生」も現れた。シンはヨウコ先生の交際相手で消息を絶った「カナヤマ先生」を見つけ出すまじないを始めるというが…。

    [感想]
    思春期の男の子の大人の女性に対する憧れ、女性が大人の男に見せる「女の顔」への戸惑いをみせる描写が
    なんとも可愛らしい。おまじないの部分はどうも「ぽかん」としてしまった。
    シンがヨウコ先生になぜそこまで執着するかがわからなかった。
  11. 水際(西村直子)
    水を打ったような静けさ
    澄んだ水を覗き込み
    首をうなだれて立つ男、一人

    「楽になるよ」「さあホラ、とびこんでみなよ」「クックックックッ…」

    [感想]
    詩、だと思います。水辺に潜むいたずらっ子たちがかわいい。
  12. FAERIE TAILS(村山潤一)

    [感想]
    水辺をバックに描かれた少女たちの絵が7点印刷されています。
    若々しい少女たちの身体が繊細な線で表現されています。

■浸の章

  1. 溺れた金魚(山田正紀)
    人気の衰えた50代のラジオパーソナリティーの男に忍び寄る降板の影。
    今の彼にとってこの深夜ラジオのパーソナリティーが唯一のレギュラーの仕事であり、
    たまにとびこむコラムやエッセイの仕事ではとても部屋代をまかないきれない。

    自室を出るとき、金魚鉢で金魚が死んでいるのを発見して思い出した。
    若い頃、落ち目のコメディアンと入れ替わりでラジオ番組を始めるとき、
    コメディアンが捨て台詞のように言った言葉「いいさ。どうせ、こういうことは順送りだ。
    あんただっていずれは金魚鉢で溺れる。いつまでも泳ぎつづけてはいられない。
    おれたち金魚はいつか金魚鉢で溺れることになるんだよ。」

    暗い気持ちで出勤する男は雨降りのミステリー・ゾーンに迷い込む。

    [感想]
    老いて飽きられた時に運も周りの助けもあってパーソナリティーできてたって気づいても遅いんだよなぁ…。
    私は若い時から才能なんて無いけど、染みるし読ませるお話だと思った。周りへの感謝を思い出さないとな。
  2. 断章(皆川博子)
    卵生種の水を飲み、腹で宝石を育む女の話など…

    [感想]
    南米へ取材旅行に出かけた皆川博子が旅行先から井上雅彦にぽつりぽつりと贈った詩篇です。ユニークで美しい話。
  3. 蟷螂(とうろう)の月(菅浩江)
    『思えば、この情景はずっと以前から私の頭の中に棲みついていたのです。それは水辺の光景です。
    細い草の上にいるカマキリが大きな満月を見上げています。清浄な光に満ち溢れ、
    揺り籠のごとき水に囲まれたところです。私はどうあってもそこへ行けない悲しみを抱いて、
    飽かず、月夜の水辺を眺めてしまうのです。』

    女は就寝時以外も、水音に誘われ意識を失うことが増えていく。
    仕事に影響が出ないよう気を張るが、女の精神不安に比例するかのように水辺の世界が現実に侵食していく。

    [感想]
    主人公が愛する水辺の美しさが豊かに表現されている。
    読んでいると、常にまどろんでいる主人公のように夢から抜けきれない、水にたゆたう心地と不安を感じた。

■海の章

  1. Mess(ヒロモト森一)
    殺し屋の「ワリオ」は「自分を殺してほしい」という風変わりな依頼を受ける。
    指定場所に向かうとそこにいたのは細身の美少女。ワリオは死にたいなら自分で死ねと、少女に銃を渡す。
    すると少女はワリオに発砲してきて…!?

    [感想]
    26ページの漫画作品です。ワリオはロングコートのイケメン。
    舞台は、転がる死体に関心を示さなそうな住人がうろつくスラムっぽいところ。
    繊細だが躍動感を感じる線が暗くワイルドな世界観に合ってます。
  2. 安珠の水(津原泰水)
    『本当に飛びこめてしまいそうなホックニーのプールの絵を眺めているとき
    安珠(あんじゅ)は妊娠の予感が、翌年安珠は水の中で男の子を産んだ。
    水の底へと沈んでいく嬰児を水面に運び上げると猫のように怒った。…のを見て
    特別な子を産んでしまったと感じた安珠は泣きじゃくりながら、
    一番好きだった淡路島の名を繰り返し、繰り返し叫んだ。』

    八つになる息子「有世(あるぜ)」の母「安珠」は海のそばで暮らしたいと思いつく。
    海になら有世も浮かぶかもしれない。海辺の街を放浪し、安珠は根本という老いた船乗りに出会う。
    妻はとうにいないという。彼ならきっと有世にも優しい、幸せになれる。

    [感想]
    終始、母親である「安珠」の話し口調でお話が進みます。
    含みのある表現などなく気楽に読めました。でもラストがわからなかった。
  3. 還ってくる- (篠田真由美)
    旅行好きの婚約者「和泉」の提案で、新婚旅行はベネチアから船で2時間の孤島に決められた。
    しかし、和泉はこの島を訊ねることはできなかった。結婚式の前日、強盗にでも襲われたのか
    自室で頭を割られ倒れているのを彼女の姉が見つけたのだ。翌日、和泉は病院で息を引き取った。

    その10日後、文彦は和泉の遺品と共に、彼女の行きたがった島を目指す。島ではカーニヴァルを目前に控えていた。
    しかし、観光客は文彦以外に見当たらず、イメージしたような祭り前の浮足立つ雰囲気も感じられない。
    文彦は宿泊先のホテルの担当者「フォンターネ」少年に島と、島にそびえ立つ教会を案内され、
    キリスト教の謝肉祭とは異なる島のカーニヴァルの由来を聞く。

    [感想]
    昔から変わらぬ姿の島と立ち込める霧が現世とあの世の境界をあいまいにしている。
    過去の蛮行とキリスト教の行事が交わり、暗く幻想的な世界が作り上げられる様子にゾっクゾクしました。
  4. 魚石譚(南條竹則)
    庭の石垣の中に光っている石が見えるだろう。っと根岸の叔父に促され、石を見てみる玉助。
    叔父は十日ばかり前から毎夜、狭い空間に閉じ込められている美しい魚が外に出たがっている夢を見るという。
    何の啓示かと思っていたところ、昔の書物でみた”魚水”という宝の話を思い出した。

    夢といい、光といい、あの石は宝物に違いないっ!?
    叔父に言われ石を割ると驚きのものが飛び出してきた!

    [感想]
    自分が老人になってもこの叔父さんのようなひょうきんさを忘れないでいたい。
    心をほぐしてくれる話だった。大好き。
  5. 留奈(江坂遊)
    岬の上に建つ朽ち果てた洋館に呼び出された男。
    「留奈は生きている」と告げられ、振り返ると、そこには死んだはずの瑠奈の姿があった。
    耐え切れず瑠奈を抱きしめようと体に触れるとぬめぬめとした寒天のような感触が!?
    動揺する男を前に留奈は妖しく微笑むのであった。

    [感想]
    世界観は好き。
  6. ウォーター・ミュージック(奥田哲也)
    ある歌手の男が南洋の島に行ったきり失踪した。

    スランプに陥っていた男は1枚のCDと出会い、そのギター演奏に感銘を受ける。
    女プロデューサーと共にギタリストの住む南洋の島に赴くが、
    そこには生気がなくビールで腹の膨れたギタリストの姿が…。
    プロデューサーは期待を裏切られた気持ちになるが、曲をリクエストする。
    快く引き受けてくれたギタリストの演奏は衝撃的で、かつてない音楽体験に圧倒されることになる。

    [感想]
    演奏を表現する筆力に驚いた。
    演奏の凄さに説得力が出て、その後のストーリーも違和感なく進んだ。
  7. 水の牢獄(森真沙子)

    西本陽介の突然の訃報を聞いたときはショックだった。

    西本と私は高校生の頃、お互いに好意を抱いていたが
    それぞれ進路を異にし自然と疎遠となり27年が経過していた。

    高校時代の淡い記憶と共に、お互いに30年後の相手に手紙を書き秘密の場所に埋めたことを思い出す。
    高校生の西本は30年後の私にどんな手紙を残したのか。地元での葬儀を終えた私は手紙を埋めた場所に向かう。

    [感想]
    他人のモテ話のせいか感情移入できず。
    (私って、モテる女性の話は嫉妬して目が曇るのかなぁ?)
  8. ほえる鮫(井上雅彦)
    「おはよう、副館長さん」絵美里の愉しそうな声がアクリルの回廊にこだました。

    まどろむ一樹の眼下には海藻の森が広がる。ここは海底都市と見まごうほどの巨大水族館。
    そして海藻の間をゆらめく影を見て一樹は動揺する。

    「どうしたの?」不安顔の絵美里に、どうやら見間違いのようだといい、開館前のひと時を二人で過ごす。
    しかし、一樹の前には次々と目を疑いたくなるものが流れてくる。

    [感想]
    こんな水族館作れるなんて大金持ちなんだろうなぁ。
    この水族館の全容を想像して夢見心地になりました。フィクションならでは。
  9. 海の鳴る宿(竹河聖)
    傷心の男は休暇を取り、ひとり静かに日本海を眺められる宿を探す。
    電車とタクシーを乗り継ぎたどり着いたのは、オフシーズンで泊り客のいない民宿。
    海が見える部屋への宿泊を希望するが、あるじはなぜか首を縦に振らない。
    粘り強く交渉すると、なんとか了承を得られ、通された部屋の窓辺でゆっくりと海を眺めながら過ごし、
    日付が変わる前には床についた。

    何かに驚き、夜中に目が覚めた。窓から冷気が吹き付け、辺りにはひどい悪臭が漂っていた。

    [感想]
    「あれ」には人類の本能が拒否反応を示すような気がする。あの並外れた素早さも怖い。
  10. 水妖記(倉阪鬼一郎)
    高層マンション最上階の自室にて元旦を迎える主人公。1月7日、地球に大隕石落下の報を受けてから短期間で変わり行く地球と自身の生活を俳句で残す。

    [感想]
    日付・天気・1日の出来事を簡潔に書いた文に1つ俳句が添えられている形式で物語が進んでいきます。
    句が私レベルでは読み解けず、どんなテクニックを使われているかもわかりませんでした。
    これは、俳句を勉強しないことには本作を存分に楽しむことはできないかと思います。
    しかし、俳句抜きとしても地球の変化、追い詰められる人類の様子は見ていておもしろかったです。
  11. 水の記憶(菊地秀行)
    刑事の「立風」は都内で起きた3件の殺人事件について、疑惑を拭いきれないでいた。
    後輩の「早瀬」は立風の様子を心配し、霊能者「紫水」を紹介する。
    立風は半信半疑のまま3件の事件現場に共通して落ちていたあるものを紫水に渡す。
    すると紫水は事件に関与した人間の死者数を言い当て、立風を驚かせる。

    [感想]
    ホラーといえど、○○が被害者というのはなかなか書きにくいのではないかと思った。その分、ショックも受けた。
    事件の原因が判明して終わるところはすっきりしてよかった。
  12. Zodiac and Water Snake(ヴィヴィアン佐藤)
    ある庭園に棲みつく水蛇と12星座を絡めた話。

    [感想]
    暗号のような、読んでいてもよくわからないお話。私には難しかった。
監修:雅彦, 井上
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