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火喰鳥を喰う|あらすじと感想ネタバレなし【パニックホラー】

火喰鳥を喰う表紙

作品情報

作者原浩
レビュー 4.8
発行日2020/12/11
総ページ数317
受賞歴第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞 大賞受賞
ふるかわ

禍々しいまでの生への執着がこもる戦死者の日記
読んだ者には次々と不幸が襲いかかる!?
ノンストップパニックホラー!

(本ページはプロモーションが含まれています)

【火喰鳥を喰う】あらすじ

盆を過ぎても厳しい日差しが降り注ぐ信州中南部。
伝統的な大きな板ぶき屋根が特徴の本棟造りの家に住む「久喜雄司(くきゆうじ)」のまわりで二つの異変が起こる。

ひとつは「久喜家」の墓石が何者かによって傷つけられたこと。
太平洋戦争で若くして戦死した「久喜貞市(さだいち)」の名が削り取られていたのだ。
もうひとつは、戦時中に書かれた貞市の日記が見つかり、信州タイムス記者の手により久喜家に届けられたことだ。

日記には昭和十八年の一月 輸送船に揺られ十日でパプアニューギニアに着き、
六月に米豪連合軍の攻撃が本格化したこと、
日本の劣勢とマラリアとの闘い、飢餓状態の中で見かけた「火喰鳥」に関する記述など、
貞一が敵兵に打たれ戦死するまでの二年間の様子が綴られていた。

過酷な状況で必死に生にしがみついた若き貞市に同情する雄司。
しかし妻の「夕里子」と祖父の「保」は日記に宿るただならぬ力に気づき、警戒する。

日記を読んだ者はひとり、またひとりと気がふれ、常軌を逸した行動をとり始める。
夕里子は超常現象に詳しい知人「北斗総一郎(ほくとそういちろう)」に助けを求める。
これは、圧倒的な欲望の力により追い詰められる人々の恐怖と抵抗の九日間を描いた物語。

【火喰鳥を喰う】感想|ネタバレなし【パニックホラー】

読みやすかった。
かなり、読みやすさは気にして書いてくれてると思います。
日記でみられる記述についても、信州タイムスの記者さんが当時の戦況を交え丁寧に補足説明してくれてわかりやすかった。

日記を読んだ者が次々と操られるかのようにバリエーションに富んだ狂行に走る中で
漠然と、「次は自分の番かもしれない」という思いを抱かせ一刻を争う状況で日記の謎に迫る
緊張感のあるミステリー要素もとても楽しめました。
一連の出来事の原因も、なんとも初めて見るもので、こんな面白いことを考える人がいるのかーと驚かされました。

当初は、もしかして追い詰められた環境下でのカニバリズムに主軸を置いた話かなぁ、と予想してそれを恐れていました。
もし著者が私でも想像できるような貧困な発想の持ち主であればこの本に新鮮な驚きや興奮は期待できず、
残念な気持ちのまま最後のページまで読み続けなければならないわけですから。
しかし!その心配はたたみかける予想外の展開によりくつがえされました。

ただ、人の心理描写が希薄なのか、せっかく過剰な気のふれようを見せる人々の行動に恐怖しきれなかった。
兵隊であった貞市については「戦死」という事実だけで
生きたいという強い思いをもったまま無念の死を遂げたであろう人物であることが想像できますが、
日記を読んだ人間については切迫した心理状態を記載するなどして狂気を感じさせてほしかった。

著:原 浩
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