作品情報
作者 | 倉狩 聡 |
レビュー | 3.9 |
発行日 | 2013/10/28 |
総ページ数 | 250 |
受賞歴 | 第20回日本ホラー小説大賞優秀賞受賞 |
無気力青年にできた新しい友達は小さな「カニ」だった。
カニの旺盛な食欲に振り回される食人ホラー。
※本書は「かにみそ」「百合の火葬」計2作を収録。
いずれも100ページ程度のお話。
「第20回日本ホラー小説大賞」作者の受賞の言葉と審査委員の選評つき
(本ページはプロモーションが含まれています)
【かにみそ】あらすじ(2話収録)
- かにみそ
- 百合の火葬
【かにみそ】あらすじ
無気力20代男が浜辺で拾った小さなカニは食欲も知能も規格外だったっ!?かさむ食費のために新たにバイトを始め、帰ってくればカニの食事風景に癒されながらカニが新聞・TVで習得した人語で他愛のない会話をする。しかし、男がはずみで殺した職場の人間をカニに与えたことをきっかけにのどかな日々に暗い影がおちる。
【百合の火葬】あらすじ
淫蕩に明け暮れた父が死んだ。一人息子の大学生「忍」は自宅を会場に弔問客の対応をしていた。そこに、見た目は40代頃と思われる美女「清野」が現れる。清野は素性を明かさないまま忍宅に住み着き身の回りの世話をするようになり放置されていた庭に百合の株を植える。忍は幼い頃に出て行った、顔も思い出せない母の姿を清野に重ねる…。清野は自分の母なのか?核心をつけないまま心地よい時間が穏やかに流れる。百合も次々と開花し近所でも評判の美しさとなっている。しかし、百合のあまりにも逞しい成長ぶりに忍は不気味さを感じる。また同時にうわごとのように百合に語り掛ける人間も現れて…。
【かにみそ】感想(ネタバレなし)
【かにみそ】感想(ネタバレなし)
固定観念を外した自由な物語にしばし、堅苦しい現実を忘れ楽しく読み進めた。しかし終盤の主人公に感情移入することができず、ラストのカニの行動も物語の都合に合わせているようにしか受け取れなかった。カニとの会話、食レポ、男の家族関係など見どころはたくさんあった。なお、人肉を食べる様子は克明には描かれません。よってグロくないです。成長すると人一人をひと飲みするようになります。
【百合の火葬】感想(ネタバレなし)
序盤から引き込まれた。「かにみそ」に肩を落としていたばかりなので期待してよいものか警戒していたが、男女の交わりを嫌悪する大学生と家庭的な美女の、性を匂わせない清々しい暮らし、置いてきた親子の時間を取り戻すような切なく愛しいやり取りに完全にほだされた。だが、ホラー要素となる百合の存在が不明瞭すぎるままクライマックスを迎え、美しい情景に感極まるといったことできず。悔しく寂しい思いで読了。
作者の、美しく完成された作品を見たい!!と思い以降の著作を調べるも犬がかわいそうな目に合う物語(←苦手)のようで、2015年以降は新たに発表された作品もないようだ。
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