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恒川光太郎「金色の獣、彼方に向かう」あらすじと感想ネタバレなし

作品情報

作者恒川光太郎
レビュー 5.0
発行日2011/11/20
総ページ数269
ふるかわ

もがきながら生きる人間の前に現れる゛生゛を超越した「獣」。
2話の書下ろしを加えた計4話収録のダーク・ファンタジー。

(本ページはプロモーションが含まれています)

恒川光太郎「金色の獣、彼方に向かう」あらすじ

話は日本の「稲光山(架空)」という土地周辺で鎌倉時代~昭和ごろに起きたことを登場人物を変えて描いてます。
美しい情景と常に恐怖を湛えた作品群に大いに魅せられました。

恒川光太郎「金色の獣、彼方に向かう」には、下記4作品が収録されています。

  1. 異神千夜
  2. 風天孔参り
  3. 森の神、夢に還る
  4. 金色の獣、彼方に向かう
  1. 異神千夜…鎌倉時代中期、対馬で生まれた少年「仁風(じんぷう)」は利発さを買われ南宋の貿易商「陳(ちん)」の弟子となる。10年後、商業の手ほどきを受け成長した仁風だが南宋に侵攻した蒙古軍に捕らえられ、奴隷になる。
    ほどなくして、彼が日本語を話せると知った蒙古の高官は博多港襲撃に伴う間者(スパイ)の一員として仁風を指名する…。日本に戻った仁風は蒙古を出し抜こうと機会を伺うが、間者の一人、巫術師「鈴華(リンホア)」はそんな彼を見透かすような視線を向ける。史述「文永の役(1274年)」を交えた波しぶき、血しぶき飛び交うバイオレンス・ファンタジー。
  2. 風天孔参り…初秋を迎える9月のある日の午後、人里離れた山の麓でオーナーの男が一人で経営する「レストラン&宿 フォレストパーク」に登山者と思われる6人程度の団体客が訪れた。彼らは食事だけ済ませ店を後にする。その日の夕方、団体客の中にいた20代前半の「月野」という女が再び店を訪れ宿泊した。彼女は翌日も宿泊を希望する。正体を明かさない彼女だが一週間もすると打ち解け、あの登山者たちの目的が「風天孔参り」であったことを話し始める。
  3. 森の神、夢に還る…私は、、霞が如き存在だった。昼は日光を避け、夜は大好きな月を眺め、森の近くの駅に停まる機関車を見に行った。ある夜、その駅にはナツコ、美しいあなたがいた―。
    上京を前に、心に宿す炎と希望に輝くナツコを見初め「それ」は彼女に憑依する。
    懸命に生きるナツコを見守る日々の中、イタチの仮面を被った易者を見かけ、「それ」は忘れていた記憶を思い出す。
  4. 金色の獣、彼方に向かう…いつもの遊び場、背の高い葦(あし)の大草原で小学生の大輝(だいき)は金色のイタチに出会う。神秘的な雰囲気を纏うイタチと過ごすうち大輝の身体に異変が現れる。
    草原の先にある決して渡ってはいけない川、その向こうにある樹海。人を拒むその地には冷たい闇が沈んでいた。

【金色の獣、彼方に向かう】感想(ネタバレなし)

  1. 異神千夜…理不尽な暴力に虐げられる様がリアルに感じられ、有無を言わせず命を取られる場面に憤りよりも圧倒的な恐怖が勝る。血なまぐさい鎌倉の世界に神を宿した巫女が登場する光景や常に緊張を強いられる状況にゾクゾクしっぱなし!!
  2. 風天孔参り…グループの山中を粛々と歩む姿は美しくもやはり異様な雰囲気を纏う。登場人物の生きづらさを考えれば風天孔も恐ろしい超常現象から、唯一の救い、祝福に変わる。視点により180度、とらえ方が違ってくるのが面白い。
  3. 森の神、夢に還る…月に照らされる夜汽車とか、うっとりする。田舎から東京で暮らすことになったナツコを見てると、父母になった気分でハラハラ。そして人の裏の顔を見てショックを受けたときはナツコと一緒に胸を痛める。そして終盤はサスペンスでドキドキ。胸が忙しい。
  4. 金色の獣、彼方に向かう…行ってはいけない、関わってはいけない。小さな子供であれば特に、そのワケって教えてもらえないですよね。禁足地や、遊び場で出会った少女の持つ悲しい事情が次々と明らかになり読み手としては謎解きの爽快感を覚えつつも胸が締め付けられる物語。
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